神経治療学
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原著
肺炎球菌性髄膜炎に肺炎・感染性心内膜炎を合併したAustrian症候群の1例
原 大祐山徳 雅人佐々木 直篠原 健介長谷川 泰弘
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2017 年 33 巻 4 号 p. 550-554

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抄録

症例は60歳男性.肺炎球菌性髄膜炎の診断で入院となった.髄膜炎は抗菌薬投与にて軽快するも,経胸壁,経食道心臓超音波検査で高度の大動脈弁逆流,逸脱を認めた.経過良好と考えられたが,第13病日より炎症所見の再燃,呼吸状態の悪化をきたし,急速に心不全症状が進行した.感染性心内膜炎による弁破壊,急性心不全と診断し,第22病日に大動脈弁置換術,大動脈基部形成術を施行した.術後経過は良好で,後遺症なく退院となった.肺炎球菌による肺炎,髄膜炎は適切な治療にもかかわらず時に致死的な感染性心内膜炎を合併することがあり,Austrian症候群として知られている.通常大酒家やcompromised hostなどに生じやすいとされるが,本症例ではこれらの危険因子はなかった.肺炎球菌感染では,危険因子の無い症例であっても本症を念頭において,心雑音の聴取などの注意深い身体所見の観察を行う必要がある.

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© 2017 日本神経治療学会
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