神経治療学
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Print ISSN : 0916-8443
ISSN-L : 2189-7824
原著
本邦におけるPost Stroke Depressionの多施設共同研究による実態調査
加治 芳明平田 幸一片山 泰朗北川 泰久鈴木 則宏河村 満三村 將黒岩 義之内山 真一郎篠原 幸人
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2017 年 34 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

【目的】本邦人では報告のない脳卒中後にみられるうつ状態(post stroke depression:PSD)の有症率,発症時期および経過,危険因子について多施設共同研究を実施して,本邦のPSDの実態を把握することを目的とした.

【対象,方法】脳卒中亜急性期–慢性期(脳卒中発症から1カ月~1年)373例,急性期(脳卒中発症から2週間~1カ月)159例,内因性うつ病12例それぞれに対しDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 4th text revision(DSM–IV–TR)診断基準及びHamilton depression rating scale(HAM–D)を用いた評価を行い,亜急性期–慢性期におけるPSDの有病率・病態・危険因子を解析した.

【結果】急性期及び亜急性期~慢性期脳卒中において,それぞれ18.2%および24.1%がPSDと診断された.また亜急性期~慢性期において,女性患者におけるPSDの危険が有意に高いことが示されたが,他は有意な発症危険因子は検出できなかった.HAM–Dサブ解析にてPSDにおける抑うつ気分,自殺企図の重症度は内因性うつ病に比較して低かったのに対して,PSDにおける意欲低下の重症度は内因性うつ病と同等であった.

【結論】慢性期のPSDは内因性うつとは異なる病態を呈し,また従来の欧米の報告と比較し低頻度であり,PSD発症と病変部位に明確な相関はみられない事を診断・治療の際,留意すべきだと思われた.

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© 2017 日本神経治療学会
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