2006 年 18 巻 4 号 p. 619-628
電話等の通信手段によって企業と顧客がコンタクトするコールセンターでは, 着信コール量に適合した要員スケジューリングが求められているが, 最繁時間帯にサービスレベル (設定時間内応答率等) を維持しようとすると, 閑散時間帯にはオーバースタッフィングが生じ, 過剰品質及びコスト高になるという問題がある. コールセンターの要員スケジューリング問題は, 時間毎の必要人員数の変動が激しい複雑かつ大規模なスケジューリング問題であり, 過去の経験に基づき人間が表計算ソフト等を用いて勤務予定を作成しているのが現状である. 本論文では, 勤務時間長等の制約条件の厳しい同問題に対し, 遺伝的アルゴリズム (GA) 及びタブー探索法 (TS) を適用し, その際に制約条件を満たさない解が発生しないような改良を加えて効果を検討した. その結果, GA及びTSで用いる簡単な評価式だけで, 最繁時間帯のサービスレベルを適度に下げ, 全体コストを大幅に削減するコールセンターの要員スケジューリングが可能となることが明らかになった. 具体的には, パラメーターフリー遺伝的アルゴリズム (PfGA), TSによる成績を比較し, さらにTSで得られた解をPfGAで改良する場合 (TS+PfGA) と, PfGAで得られた解をTSで改良する場合 (PfGA+TS) とも比較し, PfGA+TSが最も成績の良くなることを明らかにした. 提案手法は, サービスレベルとコストという相反する要素の重要度について, スケジューリングシフトの評価式の係数を調節することで自由に設定し, それに従って適応的 (アダプティブ) に準最適スケジューリングを作成することを可能とすることに, 従来の手法にはない特徴がある. インターネット社会において今後ますます企業にとって重要性の高まっていくコールセンターの効率的な運営に寄与することが期待できる.