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実践研究論文
カオス情報規範を適用した石油精製設備の高圧ガス漏洩検知
谷 哲次長迫 透藤本 泰成山口 亨
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2009 年 21 巻 1 号 p. 77-89

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抄録

多数の高圧設備を備える石油精製プラントにおいて,高圧ガスの流出事故は,2次災害の危険を招く恐れがある.そこで,早期にガス漏洩を検知する手段として,高価な超音波探傷機器を改良した高圧ガス漏洩検知が提案されている.しかし,近年のディジタル技術の発展と漏洩音の周波数帯域を測定できる集音器の組合せ,そして解析技術の研究開発により,比較的安価に,かつ精度良く漏洩を検知できる可能性がでてきた.ガスの漏洩事故が生じた場合,漏洩付近では,定常的な暗騒音に対してその漏洩音が支配的になることから,非日常的な音響状態になる.これまでの研究では,暗騒音データを自己回帰モデルのような数式で記述して逆フィルタを設計し測定した音響データとその逆フィルタ処理後のデータとを比較する手法が開発されている.しかしながら,音響データが非定常である場合は,数式モデルの適合が十分でない理由から漏洩の検知が困難となる.そこで,数式を用いない手法が必要と考えた.本論文では,市販のマイクロフォンを用い,非定常でかつ非線形な時系列データの解析に適したカオス理論を適用して漏洩検知を行う.はじめに模擬的に不燃性ガスを漏洩させ,測定した暗騒音と漏洩音が持つ決定論的性質について確認する.次に,異常診断に特化した評価手法としてカオス情報規範を提案する.そして,このカオス情報規範を導入した高圧ガス漏洩検知システムを開発し,出光興産(株)千葉製油所の改質ガソリン蒸留装置内で不燃性ガスを模擬的に漏洩させた漏洩検知の実証実験を行い,その有効性を検証する.

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© 2009 日本知能情報ファジィ学会
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