2011 年 23 巻 4 号 p. 411-427
近年,情報関連技術の普及と発展に伴い,カーナビゲーションを代表とする地理空間情報サービスが普及している.しかし,地理空間情報サービスの基盤となる地図情報の整備は人手による現地踏査に依存しているため,新店舗の開店などの実空間の情報変化に地図情報が追従できていない問題がある.そこで,著者らは,Web上の新店舗の開店情報を対象として,自然言語から店舗名,住所や業種などの店舗情報を自動収集するテキストマイニングの研究を行ってきた.しかし,新規開店に関連するキーワードだけを用いてマイニングを行った場合,業種別の単語出現傾向の違いや,単語の連接関係によって生じるノイズなどの自然言語の曖昧性に起因する課題に加え,情報自体の正誤を評価できないという課題に直面した.そこで,本研究では,キーワードによるマイニングに加え,マーケティング分析の指標に基づいて,店舗の業種と出店位置の地理的特性との関係を活用することで,これらの課題を克服することを目指す.実験から,地理的特性を考慮した情報を評価することによって,新店舗に関する開店情報を高精度に取得できることを実証した.