2012 年 24 巻 1 号 p. 627-636
従来,ロボットの知的な振る舞いの発現において,アクチュエータの違いによる影響は小さいと考えられ,多くのロボットにはアクチュエータとしてモータが用いられてきた.しかし,生物は,粘弾性を有する筋肉を用いており,近年,筋肉の持つ力学的性質が知的な振る舞いの発現に寄与しているのではないかと考えられている.本論文では,環境に適応するために必要とされる時間(学習時間)の長さが淘汰圧として働くことで,筋肉のような粘弾性を有するアクチュエータが進化的に獲得されると考え,シミュレーションによりこれを検証する.具体的には,2リンクマニピュレータによる障害物回避および捕球の二つのタスクを例にマニピュレータを進化させ,粘弾性を持ったアクチュエータが獲得されるとともに,身体の制御の一部をこの粘弾性に任せることで,後得的な学習の負担が軽減され短時間に学習が可能となることを示す.