2014 年 26 巻 5 号 p. 820-829
GPSなどの測位システムと携帯電話などの無線通信の普及により,ユーザの位置情報を正確かつリアルタイムに取得できるようになった.しかし,正確かつ即時性の高い位置情報の公開は,実空間でのユーザの特定を可能にし,匿名性を失わせる.ユーザの滞在位置に誤差を与えることで匿名性を維持できるが,位置精度の低下はサービス品質の劣化を招く.本論文は,k匿名性と位置精度をともに満足する新たな位置情報の曖昧化手法Virtual Scentを提案する.Virtual Scentは,個々のユーザをぼやっとした「匂い」として表示することで匿名性を確保する.複数のユーザが匂いを発すると,それらは互いに混ざり合い,正しい位置で強め合うため,曖昧化される位置情報でも精度を保証することができる.シミュレーションと実験でVirtual Scentを評価し,信頼性と有用性を示す.