日本口腔インプラント学会誌
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原著
初期内部骨形成をもたらすベータ型リン酸三カルシウムによる カルシウム供給を介した骨芽細胞分化の活性化
加藤 英治山田 将博櫻井 薫
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2013 年 26 巻 3 号 p. 405-417

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抄録

背景:ウシ真皮由来の生体吸収性コラーゲンスポンジと,多孔性ベータ型リン酸三カルシウム(β-TCP)小顆粒からなる複合体は良好な臨床的操作性,優れた骨伝導能と生体内崩壊性を示す可能性がある.
目的:本研究の目的は,動物実験と細胞培養実験モデルを用いて,β-TCP コラーゲン複合体の組織学的,細胞生物学的性質を示すことである.
材料と方法:β-TCP コラーゲン複合体もしくは対照のコラーゲンスポンジを,直径5.0 mm のラット頭蓋骨欠損へ埋入した.術後2,4および8週に組織学的評価を行った.ラット大腿骨骨髄由来骨芽細胞様細胞を,ポリスチレン培養皿上で物理的接触がないように,β-TCP コラーゲン複合体もしくは対照コラーゲンスポンジとともに共培養した.
結果:治癒初期に,β-TCP コラーゲン複合体は,生体内崩壊とともに,材料内外から骨芽細胞と結合組織様組織の侵入を受けた.最終的に,β-TCP コラーゲン複合体は埋入部位の体積を減少させずに緻密で厚い成熟骨組織に置換された.一方,対照コラーゲンスポンジを埋入した骨欠損内では,薄い線維様組織のみ観察された.β-TCP コラーゲン複合体は,対照コラーゲンスポンジよりも,共培養した骨芽細胞様細胞のアルカリフォスファターゼ活性やvon Kossa 陽性石灰化基質産生量,細胞内カルシウムレベルを上昇させた.
結論:β-TCP コラーゲン複合体は,ラット頭蓋骨クリティカル・サイズ骨欠損において,治癒初期には材料内部で骨梁形成をうけ,その後,成熟骨組織に完全に置換された.さらに,β-TCP コラーゲン複合体はカルシウムの供給を通じて骨芽細胞様細胞の分化を刺激することが示唆された.これら所見は,β-TCP コラーゲン複合体の優れた骨伝導性,生体内崩壊性および骨刺激活性を支持するものであった.

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© 2013 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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