日本口腔インプラント学会誌
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原著
ラット頭蓋骨骨膜挙上モデルにおけるリン酸カルシウム多孔体の骨造成に関する研究
田 昌守雨宮 剛志早川 徹
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2013 年 26 巻 3 号 p. 433-443

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抄録

本研究では,ラット頭蓋骨の骨膜下に連通多孔体ハイドロキシアパタイトであるネオボーン®(NB),または連通多孔体β-トリリン酸カルシウムであるオスフェリオン®(OS)を埋入し,骨の治癒過程を伴わない骨造成の観察を行った.NB は非吸収性であり,OS は吸収性である.
NB とOS は連通多孔体構造を有している.走査電子顕微鏡観察の結果,NB の直径約100~200μm の大きさの微小気孔は,球形で均一的な形状をしていた.OS の微小気孔は不均一な形状をしており,その数はNB よりも少ないことが分かった.NB とOS のエックス線解析パターンから,それぞれ両者とも純度の高いハイドロキシアパイトとβ-トリリン酸カルシウムであることがわかった.
埋入したNB,OS のラット頭蓋骨骨膜空隙の中央付近にカルセインによる蛍光標識がみられ,両材料とも骨の誘導はラットの頭蓋骨表面から起こり,骨膜側からは起こっていなかった.埋入後4 週と8 週経過後では,NB とOS のグループの間で緑のラベリング線の長さに統計学的に有意差はみられなかった.(p>0.05)
NB とOS の両グループの骨造成の組織学的観察でも,ラットの骨膜側からではなく頭蓋骨表面側から新生骨の形成が認められた.術後4 週では新生骨形成はNB,OS ともに非常に少なく部分的であった.術後8 週では,連通多孔の内部に成熟した骨形成が確認できた.NB では術後4 週から8 週にかけて,材料の寸法変化は全くみられなかった.一方,OS では埋入期間中,試材の吸収のため試料の高さが約8~9%減少した.術後4 週までのNB とOS の新生骨形成の割合は約5%程度であった.術後8 週では,両材料ともに,統計学的に有為な新生骨形成の増加がみられた(p<0.05).8 週目ではOS はNB に比較して統計学的に有意に高い割合の骨形成を示した(p<0.05).
以上,ラット骨膜挙上モデルを用い非吸収性多孔性リン酸カルシウムセラミックと吸収性リン酸カルシウムセラミックの骨造成の違いが確認でき,体積は減少するものの,連通多孔性の吸収性がより多くの骨造成に関与することがわかった.

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© 2013 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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