日本口腔インプラント学会誌
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チタン製インプラントの腐食に対する臨床的考察
松井 孝道
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2017 年 30 巻 3 号 p. 164-173

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抄録

骨と結合し軟組織とも生体親和性の高いチタンは耐食性にも優れ,現在インプラントに使用される主な材料となっている.しかし,口腔内である一定の条件下におかれると腐食するとの報告がある.チタン腐食の原因となる因子としてチタン表面におけるpH,溶存酸素濃度,フッ素の存在などが挙げられる.インプラントの周囲環境となる口腔内は種々の細菌による有機酸,pHの低い食品・飲料物,炎症に伴うpH の低下,深いインプラント周囲ポケット内における溶存酸素濃度の低下,フッ素入り歯磨剤の使用など過酷な環境下にある.臨床においても,インプラント周囲肉芽組織からのチタン元素の検出やチタン表面において腐食孔が多数観察されている.チタンの組織内溶出はインプラント周囲炎において骨吸収を加速させるという報告もあり,さらには粘膜貫通部の鏡面研磨面における多数の腐食孔の形成はインプラントのメインテナンスに不利となる.基礎研究において歯磨剤レベルでのフッ素のチタンに対する腐食の影響が指摘される中,臨床でもチタンの腐食が観察される以上,現時点ではその原因となりえるフッ素入り歯磨剤のインプラントへの使用はインプラントの長期安定を維持するうえで注意を要すると思われる.

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© 2017 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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