日本口腔インプラント学会誌
Online ISSN : 2187-9117
Print ISSN : 0914-6695
ISSN-L : 0914-6695
総説
口腔インプラント治療に必要な上顎洞の機能的臨床組織解剖
佐藤 公則
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 33 巻 1 号 p. 14-20

詳細
抄録

上顎洞が正常の機能を保つためには,上顎洞自然口とostiomeatal complex経由の換気(ventilation)と排泄(drainage)が保たれている必要がある.

上顎洞の換気は,直径が5 mm弱の狭い管腔状の上顎洞自然口を通して行われ,排泄は上顎洞粘膜の粘液線毛輸送機能によって行われている.上顎洞自然口とostiomeatal complexの病変により上顎洞自然口は容易に閉塞し,上顎洞の換気と排泄が妨げられる.

上顎洞炎の治癒を遷延化させる因子には,鼻・副鼻腔形態の異常(ostiomeatal complexの閉鎖による換気障害など),粘膜防御機能の低下(気道液の産生分泌と粘液線毛系が関与する排泄障害など),鼻腔・副鼻腔・上気道粘膜の炎症,感染などがある.上顎洞炎の治癒を遷延化させる因子は互いに影響を及ぼし閉鎖副鼻腔での炎症の悪循環を形成し,急性・慢性副鼻腔炎の治癒を遷延化させる.

鼻・副鼻腔形態の異常のなかで,ostiomeatal complexの閉塞性病変による上顎洞の換気と排泄不全が上顎洞炎の主な原因であり,上顎洞炎を遷延化させる重要な因子である.

上顎洞を含めた副鼻腔炎治療の基本的理念は,各副鼻腔の換気と排泄を十分にし,換気と排泄機能を再度獲得させ,副鼻腔粘膜を正常化させ,副鼻腔炎を治癒に導くことである.また副鼻腔炎の治癒遷延化因子を考慮した治療も同時に行う必要がある.

たとえ上顎洞粘膜が肥厚していても,上顎洞自然口が開存しており,上顎洞内に貯留液がなく無症状であれば,粘膜の粘液線毛輸送機能と上顎洞の換気と排泄は保たれていると考えてよい.

著者関連情報
© 2020 公益社団法人日本口腔インプラント学会
前の記事 次の記事
feedback
Top