日本口腔インプラント学会誌
Online ISSN : 2187-9117
Print ISSN : 0914-6695
ISSN-L : 0914-6695
総説
医療事故から学ぶインプラント治療に必要な解剖学
山下 佳雄
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 34 巻 1 号 p. 10-17

詳細
抄録

デンタルインプラントの有用性は,十分なエビデンスをもって証明され,補綴治療の一手段として広く臨床の現場で用いられるようになって久しい.

しかし一方で,インプラント手術における事故も多数報告され,社会的にも問題視されている.その多くが神経麻痺,出血,インプラントの迷入,心身医学的障害といった事例であり司法がかかわる事例も少なくない.インプラント治療は外科処置であり,常にリスクと背中合わせであることを治療医は覚悟しておかなくてはならない.

これらの事故を回避するために近年,ガイデッドサージェリーも普及し一般的になってきたが,本来,ガイデッドサージェリーは事故を回避するための目的だけではなく,予後を予見し精度の高いインプラント手術を完遂するためのものであることをわれわれは再認識しなくてはならない.デジタルに依存していれば事故はないという誤った風潮は非常に危険である.

インプラント手術も含めた歯科外科処置において,最も大切なことは解剖に精通しておかなくてはならないことである.つまり頭蓋形態小変異に関する知識も十分に備えておかなくてはならない.これまでの事故の多くは,解剖を熟知できていなかったがための症例が多く,言葉を換えれば事故から学ぶべきものは多い.咬合,つまり補綴的な観点はインプラント治療成功の鍵であることは否定しようがないが,インプラント手術に際しては,人体の構造を無視することはできない.

著者関連情報
© 2021 公益社団法人日本口腔インプラント学会
前の記事 次の記事
feedback
Top