2022 年 35 巻 3 号 p. 212-221
目的:軽度の全身疾患保有者,喫煙者および歯周炎罹患者を特に排除せずに定期的なメインテナンスの回数を基準にしてインプラント周囲炎の発生頻度を調査することを目的とした.
方法:歯科医院1施設にてインプラント補綴を行った患者に対して,インプント治療終了後3年以上経過した患者を対象とし,2019年1月~2020年12月の2年間にメインテナンスを目的に4回以上来院した患者をregular compliers群(RC群),4回未満の患者をirregular compliers群(IC群)に分類して,それぞれのインプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎の罹患を対比した.
結果:インプラント残存率は99.76%(補綴後Mean±SD:75.21±30.53カ月経過)であった.RCの被験者においては,埋入したインプラント263本のうちインプラント周囲炎に罹患したものは93本で罹患率は35.5%であった.ICの被験者においては,埋入本数126本に対して周囲炎に罹患したものは79本で罹患率は62.7%であった.RCとICにおいて,周囲炎罹患に関して統計学的有意差を示した(p<0.001).また,歯周炎を認めずかつRC群であった者においてはインプラント周囲炎の罹患率が26.2%であった.インプラント周囲炎罹患のオッズ比は,インプラント周囲粘膜炎罹患の有無(4.825),歯周炎の罹患の有無(4.290),定期健診来院の有無(3.054)であった.
考察および結論:インプラント周囲炎発症予防には,定期的なインプラントメインテナンスと同時に天然歯に対する歯周炎の維持療法(SPT)の併用が重要であることが示唆された.