2023 年 36 巻 1 号 p. 4-11
近年,臨床研究ではリアルワールドデータ(Real-World Data)が注目されている.リアルワールドデータは日々,診療所や病院で行われる日常臨床の記録を反映した臨床データの総称である.リアルワールドデータを活用した臨床研究は増加しており,Randomized Controlled Trialの研究だけでは,明らかにできないエビデンスの創出に貢献している.日本でもさまざまな領域で,リアルワールドデータ研究が実施されているが,歯学系の臨床研究で応用されている事例は限られている.そこで,本論文では,リアルワールドデータとは何か,欠損補綴治療,それもインプラント治療にどのようにして応用が可能なのか,現行の法律や臨床研究,学会を取り巻く環境の視点から考えてみたい.本論文には,インプラント治療にかかわるデータベース研究のあるべき明確な解答は記載されていないが,「インプラント治療が国民の健康長寿の延伸に寄与する」というクリニカルクエスチョンを明らかにする研究プロトコールの立案に少しでも貢献できれば幸いである.