2015 年 27 巻 3 号 p. 49-56
われわれは,頭蓋顎顔面の形態的非対称は人間であれば必ず存在し,むしろ軽度の非対称が正常であるという計測学的事実と人間の視覚的非対称識別能力という二つの観点から顎顔面非対称を分類してきた。今回,この分類法をベースに,顎顔面非対称患者の術後における自己認識に影響を与える因子を見いだし,下顎再建への応用を試みた。さらに,これら因子と移植骨の吸収,そして末梢動脈疾患からみた腓骨の限界と絶対的適応症について検討した。過去19年間に神戸大学口腔外科,形成外科,群馬大学歯科口腔・顎顔面外科で腓骨皮弁により下顎区域再建された21例を対象とし,下顎欠損範囲と術後の整容性との関係について分析した。末梢動脈疾患(PAD)患者およびその予備軍における腓骨動脈温存の重要性については文献的に考察を行った。その結果,術後の非対称性認識,移植腓骨吸収さらに末梢動脈疾患(PAD)患者およびその予備軍における腓骨動脈温存の重要性等を考慮すると,遊離腓骨皮弁における下顎再建は,骨切りを要しない下顎直線部で,顎角部が温存された症例に限定され,それ以外では他の再建法を考慮する必要があると考えられた。