2016 年 28 巻 1 号 p. 1-7
類基底細胞扁平上皮癌(Basaloid squamous cell carcinoma:BSCC)は,1986年にWainらによって初めて報告された扁平上皮癌の亜型の一つでありまれな腫瘍である。WHOの分類では高悪性度で予後不良とされている。発症にはアルコールと喫煙の関連が指摘されている。われわれは62歳,男性の口底に発生したBSCCの1例を経験したので報告する。
口腔内診査では25×20mm の腫瘍を左側口底に認めた。生検組織の検査では類基底細胞からなる胞巣,腫瘍中心部の壊死,細胞の異型性,多数の細胞分裂像,腫瘍周囲上皮の異形成をみとめた。これらの所見からBSCCと診断した。左下顎辺縁切除を含む腫瘍切除と左側根治的頸部郭清術変法を行った。現在,術後2年が経過しているが再発もなく経過良好である。