日本口腔腫瘍学会誌
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症例報告
外来通院下でMohsペーストを用いてchemosurgeryを行った末期下顎歯肉癌の1例
齊藤 昌樹夫 才成川口 拓郎赤坂 廉藤 武智澤木 佳弘
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2017 年 29 巻 3 号 p. 147-152

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抄録

今回われわれは,外来通院下でMohsペーストを用いてchemosurgeryを行った末期下顎歯肉癌の1例を経験したので報告する。患者は84歳,女性。右側下顎歯肉扁平上皮癌(T2N2bM0)に対し,外科療法を拒否されたため,化学放射線療法(S-1:80mg/日×42日間,放射線治療60Gy/30fr)を施行した。治療開始1年6か月後に局所再発を認め,2年9か月後には腫瘍が右側下顎皮膚へ有茎性に増大し,表面からは出血や浸出液を伴うようになった。Mohsペーストによるchemosurgeryを通院下にて行うことを計画し治療を開始した。Mohsペーストを塗布し,塗布約24時間後に腫瘍部の固定化された部位を無麻酔下にて切除することを繰り返し行い腫瘍の減量を行った。出血,浸出液は制御され,ガーゼ交換も1日1回で済むようになった。しかしながら徐々に全身状態が悪化し,chemosurgeryを施行してから約3か月後に自宅で永眠された。Mohsペーストを用いたchemosurgeryは終末期医療における緩和ケアに有用であり,外来通院および在宅医療での使用も可能であると考えられた。

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© 2017 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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