日本口腔腫瘍学会誌
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歯肉癌に対する術前化学療法の意義に関する臨床病理学的研究
―切除材料における新しい組織学的悪性度評価法の試み―
内山 公男
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1999 年 11 巻 2 号 p. 55-73

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抄録

歯肉癌新鮮例のうち, 術前化学療法の後に手術を施行した53例について, 治療成績や組織学的悪性度評価を用いて臨床的および病理組織学的に術前化学療法の意義について検討し, 以下の結果が得られた。
1.術前化学療法の効果については, 臨床的諸事項や組織学的分化度別では概して有意差はみられなかったが, 組織学的悪性度別では臨床的奏効率では有意差はないものの, 病理組織学的奏効率では悪性度の低い群や中等度の群が高い群よりも有意に有効であり, 5生率や再発率, 転移率などでみた治療成績でも概して良好であった。
2.術前化学療法により生検材料に比し切除材料では組織学的悪性度評価項目の各評点が下がる傾向があった。また, 悪性度が低下した群の方が5生率は高い傾向があり, 転移率は有意に低下していた。
3.これらのことより, 組織学的にみて悪性度の低い歯肉癌に対しては術前化学療法はよく奏効し治療成績の向上に寄与しているものと考えられる。
4.従来の組織学的悪性度評価項目に, 切除断端の上皮性異形成の有無を加え組織学的悪性度評価を試行した。その結果, 悪性度評価項目のうち, 浸潤様式と切除断端の評点が高いものの方が予後不良であった。

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