2000 年 12 巻 2 号 p. 54-58
ヒトT細胞白血病ウイルスI型 (HTLV-I) に関与するT細胞リンパ腫は成人性T細胞白血病/リンパ腫 (ATL/L) と呼ばれている。このたび成人性T細胞白血病 (ATL) 治療後に下顎骨に腫瘤体病変を形成したATL/Lの一例を経験したので, その概要を報告した。
患者は69歳男性で, 左側下顎部の腫脹を主訴として当科を受診した。当科初診の22か月前, 成人性T細胞白血病にて化学療法を受けた既往があった。初診時口腔内所見として, 左側下顎小臼歯部に大きさ35×30×15mmの弾性硬の腫瘤を認めた。血液血清検査において, 抗HTLV-I抗体陽性であった。胸腹部CT検査の結果, 他の部位に病変はみられなかった。生検術の結果, 病理組織学的にびまん性多形細胞型T細胞リンパ腫と診断した。放射線療法および化学療法を行ったが, 治療開始から約5か月後に死亡した。