日本口腔腫瘍学会誌
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口腔扁平上皮癌のEカドヘリン, カテニンファミリーの発現様式とその臨床的意義
平塚 博義仲盛 健治知念 克二比嘉 努上田 剛生津波古 判喜舎場 学砂川 元
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2001 年 13 巻 Suppliment 号 p. 283-288

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抄録

口腔扁平上皮癌135例を対象に上皮細胞接着因子であるEカドヘリンーカテニン複合体の発現様式を免疫組織学的に検索し, その臨床的意義に関する検討を行った。Eカドヘリンは55%, αカテニンは66%, βカテニンは61%, γカテニンは59%の症例に発現の減弱を認めた。各々のタンパクの発現様式は, 癌の発育様式, 浸潤様式, 臨床病理学的悪性度評価および組織学的に確認された頸部リンパ節転移との間に有意な関係が認められた。さらに, 各タンパクの減弱例は非減弱例と比較すると, 有意に生存率が不良であった。これらの結果から, カドヘリンーカテニン複合体の発現異常は, 口腔扁平上皮癌の浸潤, 転移に関与していることが示唆された。しかし, 多変量解析の結果, リンパ節転移の評価に関しては, N評価に劣り, 予後に関しては, TNM病期を超えるにいたらなかった。一方, Stage I, IIの早期癌を対象にリンパ節転移との関係を検討すると, Eカドヘリン, カテニンファミリーの発現異常のみが転移との間に有意な関係を有していた。以上の結果から, Eカドヘリン, カテニンファミリーの発現異常の検索は, 早期口腔扁平上皮癌の転移の予測, 診断に有用であることが示唆された。

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