日本口腔腫瘍学会誌
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口腔扁平上皮癌細胞におけるE-cadherinとSnailおよびMetastasinの発現について
森山 万紀子中川 清昌山本 悦秀
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2001 年 13 巻 Suppliment 号 p. 289-292

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抄録

上皮性の腫瘍細胞は, 悪性転換の過程で細胞間接着能が減弱する傾向にあり, その要因として細胞接着因子E-cadherinの発現の減少が考えられている。E-cadherinの発現は, 主として転写レベルで制御されており, 線維芽細胞や上皮性腫瘍細胞では転写因子snailがE-cadherinの発現を抑制することが示されている。また, metastasin (mts-1/S100A4) は, 細胞運動に関与し, 癌の浸潤や転移に促進的に作用する内在性因子と考えられている。そこで, 浸潤性の異なる口腔扁平上皮癌細胞株における, E-cadherinと関連タンパク質, snailおよびmetastasinの発現の様相を, タンパクならびに遺伝子レベルで解析するとともに, 口腔扁平上皮癌の組織標本におけるmetastasinの発現について, 免疫組織化学的に検索し, これら因子と浸潤・転移との関連性について比較検討した。その結果, タンパク, 遺伝子レベルともに, 浸潤様式4D型の細胞株では, E-cadherinの発現は認めなかった。また, RT-PCRによる遺伝子発現様式の解析で, 浸潤様式4D型の細胞株では, snailとmetastasinはいずれも強く発現し, E-cadherinの発現と逆相関していた。さらに, 組織標本の免疫組織化学的検索から, metastasinは高浸潤症例で高率に発現を認めた。以上より, 口腔扁平上皮癌の浸潤・転移の過程で, 細胞間接着能が減弱し, その要因としてE-cadherinが重要な役割を担っていることが示唆された。また, E-cadberinの発現制御にsnai1が関与し, 口腔扁平上皮癌においてもmetastasinが腫瘍の浸潤と関連し, 予後因子となる可能性が示唆された。

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