日本口腔腫瘍学会誌
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口腔扁平上皮癌の遠隔転移巣の倍加時間と転移成立時期に関する検討
小松原 秀紀梅田 正博南川 勉尾島 泰公柳田 恵重田 崇至渋谷 恭之横尾 聡古森 孝英
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2005 年 17 巻 4 号 p. 232-238

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抄録

口腔癌患者の予後向上のためには局所腫瘍だけではなく遠隔転移の制御が重要であるが, 転移の成立時期について検討した報告は少ない。今回経時的に転移巣のX線検査が施行できた3例の口腔扁平上皮癌患者において, 転移巣のダブリングタイム (TDT) と転移成立時期について検討した。
症例1は頬粘膜癌で, 放射線治療を受けたが再発, 手術と化学療法を行ったが肺転移を生じた。化学療法効果はNCであった。転移巣のTDTは27日で, 転移成立時期は再発腫瘍に対し化学療法と手術を施行した時期と推測された。
症例2は舌癌で, 術前化学療法+手術+術後照射が施行されたが, 全身転移を生じた。化学療法効果はNCであった。転移巣のTDTは75日で, 初診時より以前にすでに転移が成立していたものと推測された。
症例3は下顎骨中心性癌で, 術前化学療法+手術+術後照射が施行されたが局所再発を認めた。化学療法効果はPDであった。再手術により局所は制御されたが肺転移を生じた。転移巣のTDTは17日で, 転移成立時期は術前化学療法を施行した時期と推測された。
口腔癌に対する化学療法の適切な施行時期を検討するためにも, 遠隔転移の発生時期を推測することは重要である。症例数が少なく明確な結論を導くことはできないが, 今後さらに検討を行いたい。

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