日本口腔腫瘍学会誌
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組織学的治療効果判定の現状と問題点
田中 陽一
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2008 年 20 巻 4 号 p. 255-261

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抄録

現在まで多くのガイドラインや取扱い規約が発表されてきたが, 化学放射線療法の組織学的効果判定は, 細胞障害や癌胞巣の破壊状況からGrade 0~IVの5段階に分類されている, 大星・下里分類にその基礎がある。
通常, 生検時の癌の大きさを基準とし, 癌胞巣の破壊された面積を測る。この手法は現在でも使用されているが判定する範囲は明確には規定されていない。さらに, 正確な細胞の生死の組織学的な判定は容易ではなく, 病理医によっても差がある。換言すれば, 組織病理学的判定は観念的で, 科学的根拠に乏しい。
著者も, 術前化学療法を行った手術材料の詳細な観察を行い, 判定の際のさまざまな問題点を検討してきた。
現時点の判定には, 以下の事柄が重要である。すなわち (1) 可能な限りの標本を作成し (たとえば, BLSS method) , すべてを観察する。 (2) 細胞, 胞巣, 間質の変化の程度を図示し, 判定の基準とする。 (3) 破壊された深部だけではなく, 表層の上皮の変化も判定する。
そして, 今後は予後や予測的因子の観点から, 浸潤形態による治療効果判定の違いも検討する必要がある。

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