日本口腔腫瘍学会誌
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24年間の当教室における唾液腺悪性腫瘍の臨床的検討
倉科 憲治峯村 俊一田村 稔砂田 修栗田 浩小谷 朗武田 進
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1991 年 3 巻 1 号 p. 49-56

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抄録

1965~1989年の24年間に信州大学医学部歯科口腔外科において治療された悪性唾液腺腫瘍の30例について臨床統計学的検討を加えた。
患者は男性16名, 女性14名よりなり, 大唾液腺腫瘍は11例 (耳下腺6例, 顎下腺5例) , 小唾液腺腫瘍は19例 (口蓋14例, 頬粘膜3例, 口底1例, 舌1例) で, 一次症例が24例, 二次症例が6例であった。
病理学的には13例が腺様嚢胞癌, 10例が多形性腺腫内癌腫, 3例が粘表皮癌, 2例が扁平上皮癌, さらに2例がその他の腺癌と診断された。初診時の臨床症状としては無痛性の腫脹が最もよくみられ (23/24) , 潰瘍形成, 疼痛, 硬結, 開口障害, 神経麻痺などの悪性病変を示唆するような症状はまれであり, また進展例で認められるのみであった。
80%の症例で外科的切除が行われ, 切除のみが16例, 放射線併用が2例, 化学療法併用が3例, 両者を併用したもの3例であった。
二次症例6例について初回治療から当科初診までの期間をみると2年から37年 (平均12.2年) に渡り, 悪性唾液腺腫瘍においては長期間の経過観察の必要性が示唆された。
1990年12月の時点で治療成績は生存16例, 原病死8例, 他病死2例, 不明4例であった。生存例の内訳は多形性腺腫内癌腫8例, 腺様嚢胞癌6例, 粘表皮癌2例であったが腺様嚢胞癌の内3例では遠隔転移あるいは再発が認められている。治療成績は多形性腺腫内癌腫において良好であり腺様嚢胞癌で不良であった。また, 大唾液腺に比べて小唾液腺の方が良好であった。

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