1991 年 3 巻 2 号 p. 213-222
1977年1月より1988年12月までの12年間に獨協医科大学口腔外科を受診した下顎歯肉扁平上皮癌一次症例23例について, 臨床病態所見ならびに治療成績について検討を行い, 以下の結果が得られた。
1.性別では, 男性16例, 女性7例 (男女比2.29: 1) で, 初診時年齢は39歳から86歳までに分布し, 平均65.0歳であった。
2.T分類ではT456.5%, T230.4%, T18.7%, T34.3%, N分類では, N152.2%, N030.4%, N2, N3各8.7%, M分類ではM18.7%であった。
3.13例 (56.5%) に下顎骨の吸収がみられ, その様式はerosive type 4例, invasive type 9例で, 後者に吸収範囲が大きい傾向であった。
4.下顎骨の吸収像と臨床進行度, 浸潤様式, 核DNAパターンとは, 一定の関係がみられた。
5.治療法は, 放射線単独7例, 手術単独, 手術+放射線, 放射線+化学療法各4例, 手術+化学療法, 手術+放射線+化学療法各2例であった。
6.治療成績は, 5年累積生存率43.4%で, 腫瘍の進展度, 治療法の相違が予後に影響を与えたと思われた。
7.原発巣の核DNA量は, 臨床所見ならびに腫瘍浸潤様式とよく相対し, 下顎歯肉癌においても, 悪性度の指標や予後の推測に有用となり得ることが示唆された。