1993 年 5 巻 3 号 p. 267-271
舌癌周辺粘膜上皮における増殖細胞核抗原 (PCNA) の分布様式について検討する目的でPCNA Labeling Index (LI) と組織学的所見との関連性について検討した。
検討対象は舌扁平上皮癌18症例の生検組織である。10%ホルマリン固定標本の薄切切片を抗PC.NA抗体PC10を用いて免疫組織化学的に染色した。顕微鏡視下でPCNA陽性細胞数を算定し, PCNA Labeling Index (LI) を求めた。
結果: 舌粘膜上皮のPCNA LIは症例や部位で異なり, 7症例のPCNA LIはm±SD=11.8±6.9 (%) であった。過形成上皮 (10例) のPCNALIはm±SD=15.1±5.9 (%) と舌粘膜上皮より高値を示した。異形成上皮 (5例) ではm±SD=32.5±9.5 (%) と著しい高値を示した。このことから異形成上皮細胞の増殖活性は高く, 癌化と密接な関係にあることが示唆された。