日本口腔腫瘍学会誌
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三重複癌の1例
加藤 幸弘安岡 忠佐木 宏吉森聡 次郎市原 秀記兵東 巌奥田 孝奥富 直立松 憲親岡 伸光
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1993 年 5 巻 3 号 p. 290-296

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抄録

我々は異時性の三重複癌の1例について報告し, また放射線誘発癌についても考察を加える。
患者は74歳男性で, 長期におよぶ左頬部の皮膚潰瘍を主訴に当科に来科した。皮膚潰瘍は当科初診の3年前から認め, 放射線性皮膚潰瘍の診断をうけていた。当科で施行した生検の病理組織学的診断は高分化型扁平上皮癌であったので治療を行った。患者の既往歴として, 当科初診の約31年前に左側舌縁部の高分化型扁平上皮癌に罹患し, Ra針による組織内照射 (総線量1212mg・hrs) を受けたが, 2回におよび局所再発をきたしたため舌部分切除術を2回と高線量の放射線治療 (X線外部照射で総線量120Gy) を受け根治されていた。さらに当科初診の1年前に原発性肝細胞癌に罹患し, 経皮的超音波ガイド下エタノール局注療法 (Percutaneous Ethanol Injection Therapy: PEIT) を受けていた。
今回, 発症した左頬部皮膚癌に対してはシスプラチンと5-FUによる経静脈的術前化学療法の後, 腫瘍切除術・頸部郭清術・即時再建術を施行した。術後経過は良好で, 5か月の入院治療後退院した。現在, 患者は定期的に経過観察されているが再発の徴候は認めていない。
舌癌と頬部皮膚癌との発生間隔は長期間で舌癌は完治していることから, 頬部皮膚癌は舌癌の局所再発や転移とは考え難く, 放射線照射野内に発生していたため放射線誘発癌と考えられた。

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