日本口腔腫瘍学会誌
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小唾液腺原発腺様嚢胞癌27例の臨床病理学的研究
組織像, 治療法と予後との関連性について
西松 成器梅田 正博川越 弘就武 宜昭藤岡 学奥 尚久寺延 治中西 孝一島田 桂吉
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1997 年 9 巻 3 号 p. 81-92

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抄録

1980年より1995年に当科で治療を行った小唾液腺原発腺様嚢胞癌27例について臨床病理学的に検討し, 以下の結果を得た。
1.原発部位は口蓋, 口底, 頬粘膜などに多かった。
2.治療法は外科的切除を原則としており, 27例中21例で手術が施行された。摘出物切除断端に組織学的に腫瘍残存を認めた場合は術後照射を追加した。
3.原発巣非再発率は初回治療後3年で89%, 5年55%であったが, 10年では29%に低下していた。
4.頚部転移は4例にみられたが, いずれも頚部郭清により制御可能であった。転移巣の組織型は4例ともsolid patternであった。
5.遠隔転移は初診時3例, 経過中13例にみられたが, 大部分の患者では転移巣の発育は緩慢であった。
6.生存率は3年74%, 5年60%, 10年20%と, 長期予後は不良であったが, 比較的良好なQOLが得られた。
7.遠隔転移を有する患者は転移のない患者に比べて生存率は低かったが, 腫瘍の部位, T分類, 組織型, 手術断端の腫瘍残存の有無などの所見と予後との関連性は認められなかった。
8.腺様嚢胞癌の根治療法は困難であることが示された。現時点では原発巣の完全切除を原則とするが, 拡大切除はQOLを考慮した範囲に止めるべきで, 必要に応じて術後照射を追加する方が妥当と考えられた。

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