日本小児アレルギー学会誌
Online ISSN : 1882-2738
Print ISSN : 0914-2649
ISSN-L : 0914-2649
合同シンポジウム6 食物アレルギー/Food Allergy
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの最近の傾向と進歩
相原 雄幸
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 26 巻 1 号 p. 138-145

詳細
抄録

食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FEIAn)は食物アレルギーの特殊型に分類される比較的稀な疾患である.その発症機序については明らかでない点も少なくない.
PubMedを用いたFEIAnに関連する論文の調査結果からは,1979年の最初の症例報告以降その報告数は増加傾向にあり,近年はアジア地域でも認知度が向上していることが推察される.また,わが国からの報告数が多いことも特徴といえる.
発症頻度については学童生徒では約1万2千人に1人程度であるが,成人の頻度は明らかではない.原因食物としては小麦製品の頻度が最も高く,その抗原解析の結果からは成人発症例ではω-5 gliadinが関連していることが明らかにされた.さらに,抗ω-5 gliadin IgE抗体の有用性が報告されている.一方,小児期発症例では必ずしもこの抗体の有用性は明らかではない.
近年,加水分解小麦蛋白含有化粧石鹸を一定期間使用後に小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを発症する例が多発し社会問題となった.経皮あるいは経粘膜感作が発症の誘因となっており,FEIAnの発症機序の解明に新たな示唆をあたえるものとも考えられ興味深い.また,難治性の即時型食物アレルギーに対する免疫療法が研究的に行われており,その治療中あるいは寛解到達後にFEIAnを発症する症例があるため注意が必要である.
治療については最近prostaglandin E(PGE)製剤の有用性も報告されている.
今後も,患者に対する不要な制限やQOLの改善のためにはこの疾病の啓発が重要である.

著者関連情報
© 2012 日本小児アレルギー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top