日本小児アレルギー学会誌
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合同シンポジウム8 免疫療法/Immunotherapy
スギ花粉症に対する急速免疫療法
藤澤 隆夫谷田 寿志長尾 みづほ
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2012 年 26 巻 1 号 p. 151-157

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抄録

近年,スギ花粉症の有病率は急速に増加,発症も低年齢化して,小児でも大きな問題となっている.薬物療法の進歩で症状のコントロールは比較的容易となっているが,治癒をもたらすことはできず,また重症例では薬物によってもコントロール困難で,患者は著しいQOLの低下を強いられる.そのような状況で,アレルゲン免疫療法は疾患の病態にアプローチする根本的治療として期待が持たれている.本研究では,最重症のスギ花粉症患者36名(男17名,女19名,年齢5才~39才)に皮下注射による急速免疫療法を行ない,その臨床効果と免疫学的パラメーターの変化を検討した.その結果,重症度は全例が治療前シーズンに最重症であったが,治療後に,ほとんどが軽症または無症状と軽快した.スギ花粉飛散数の変化の影響を考慮して,治療前シーズンよりも治療後シーズンの方が飛散数が多かった年で比較しても同様の結果であった.免疫学的パラメーターはスギ特異的IgG4抗体の上昇,スギ花粉抗原による好塩基球CD203c発現の低下を認めた.一方,副反応は,局所反応は全例,蕁麻疹16.7%,喘鳴・咳などの呼吸器症状8.3%,2臓器以上のアレルギー症状でアナフィラキシーと診断した例を8.3%に認めた.いずれも適切な処置により回復した.アナフィラキシーショックは認めなかった.高い臨床効果を期待できるが,少なからぬ副反応の存在は,現時点における本治療法の適応は重症例に限定されると考えられた.

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© 2012 日本小児アレルギー学会
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