日本小児アレルギー学会誌
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総説(シンポジウム1:新生児・乳児消化管アレルギーの病態解明へのアプローチ)
消化管病理からの鑑別診断
工藤 孝広丘 逸宏新井 喜康京戸 玲子佐藤 真教宮田 恵理細井 賢二松村 成一大林 奈穂幾瀨 圭神保 圭佑森 真理青柳 陽藤井 徹大塚 宜一清水 俊明
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2017 年 31 巻 1 号 p. 7-12

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抄録

 新生児・乳児消化管アレルギーの1型である食物蛋白誘発性腸症は, 非IgE依存性の食物アレルギーの一つであり, 新生児期から1年以内に発症し, 嘔吐や遷延する下痢, 血便, 腹部膨満, 時に成長障害や発達障害などを呈する重篤な疾患である. 予後は良好であるが診断が困難であることも少なくないため, 早期診断や早期介入が重要である.

 診断には食物負荷試験が基本となるが, 客観的検査として食物抗原に対する抗原特異的リンパ球刺激試験が原因抗原の同定に有用なことがある. 消化管内視鏡検査では十二指腸や大腸粘膜で炎症所見を認める. 粘膜生検病理検査では好酸球やリンパ球などの炎症細胞浸潤がみられる. さらに, 吸収不全症, 体重増加不良を呈する食物蛋白誘発性腸症では, 十二指腸粘膜において絨毛の萎縮, 陰窩の過形成を評価する.

 慢性下痢症をきたす疾患は食物蛋白誘発胃腸症以外にも多く存在するため, 病理組織検査を用いて消化管粘膜の所見を確認することは, 診断の一助となるだけでなく経腸栄養を行う指標にもなりうるため, 積極的に行う必要がある.

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© 2017 日本小児アレルギー学会
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