日本小児アレルギー学会誌
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気管支喘息児におけるテオフィリン薬物動態の患者間および患者内変動
(I) 点滴静注の場合
森川 利夫
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1991 年 5 巻 3 号 p. 107-113

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抄録

気管支喘息発作の治療のためにアミノフィリンの点滴静注を受けた0歳から15歳の小児164例の354回の発作において, テオフィリン薬物動態パラメーターを合計1167回にわたって計算した. 15分の投与で分布容積 (Vd) を計算した76例の患者間平均値は392±103ml/kg(CV*=26.3%), 同一症例で3回以上計算した13例のCV値の平均も26.3%であった. 2時間の投与でVd値を計算した114例の患者間平均値は408±54.6ml/kg (CV=13.3%), 3回以上2時間投与でVd値を計算した16例のCV値も平均13.1%と変動が小さかった. 数時間の維持量の投与で消失速度定数 (Ke) を計算した156例の患者間平均値は01160±0.0417/h (CV=26.1%), 3回以上計算した77例の患者内CV値の平均は32.0%とともに変動が大きかった. 12時間以上同一速度で投与してクリアランス (CL) を計算した86例の患者間平均値は57.4±13.9ml/kg・h (CV=24.2%) であったが, 3回以上計算した23例の患者内平均CV値は19.3%と小さかった.
これらの結果からアミノフィリン投与の個別設計を作成するにあたって, 15分の投与で計算したVd値や数時間の投与で計算したKe値を用いるのは危険で, 2時間の投与で計算したVd値と12時間以上同じ速度で投与して得たCL値の各患者毎の値を用いる必要があるものと考えられた. *CV値: Coefficient of variation CV=標準偏差÷平均値×100(%)

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