2012 年 28 巻 6 号 p. 315-319
症例はDown症の3カ月, 男児. 胎児心エコー検査にて完全型房室中隔欠損症(c-AVSD)と診断後, 在胎38週2日2,387 gにて出生した. 生後2カ月時の術前心臓カテーテルおよび心エコー検査では一側心室低形成や共通房室弁狭窄所見は認められなかったが, 左室内の両乳頭筋サイズに著明な不均衡所見を認め, single papillary muscleが疑われた. その後房室弁逆流, 心不全所見の増強を認め, 生後3カ月, 体重3.73 kgにて心内修復術施行となった. 手術診断はRastelli A型のc-AVSD, 術中所見では左側房室弁の腱索は共通前尖後尖ともに全て単一の乳頭筋に付着しており, 通常のcleft閉鎖では心内修復術後parachute型僧帽弁(PMV)の血行動態が懸念された. このため手術ではtwo-patch methodにて欠損孔閉鎖のうえ, 左側房室弁の共通前尖後尖間にapposition zoneを形成するように留意して体表面積の正常弁口径90%にてcleft基部のみの修復を行った. 術後は一時的にNO使用と両側の胸水貯留を認めたが, 心機能および左側房室弁機能は良好に経過した. 単一乳頭筋によるparachute型左側房室弁形態を伴う完全型房室中隔欠損症では, 心内修復にあたり術後の弁狭窄を回避し良好な房室弁機能を維持するために修復方法を慎重に検討することが重要と考えられた.