日本小児循環器学会雑誌
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Fontan 循環における肝合併症
藤澤 知雄田中 靖彦
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 29 巻 4 号 p. 162-170

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抄録

Fontan 術は機能心室が一つしかない先天性心疾患群に対して,上・下大静脈を肺動脈にバイパスする機能的修復術であり,難治性の先天性心疾患患児に対して画期的な手術法として確立された.しかし,術後の遠隔期にFontan循環に起因する多臓器にわたる合併症がみられることがあり,その予防や対策が重要な課題になっている.この合併症のなかで,最近になり肝線維症,肝硬変,肝細胞がんなどの肝合併症に関する報告が増加している.筆者らは主に静岡県立こども病院においてFontan 術後の肝合併症を診療しているが,当初は肝合併症はトランスアミナーゼなどの通常の肝機能検査は基準値以内なのでスクリーニングが困難であることを知った.しかし,ヒアルロン酸,IV型コラーゲン,プロコラーゲンIII ペプタイドなどの血清線維化マーカーが高値になることが多く,それが肝合併症の診断の端緒となった.また肝線維症と肝硬変の鑑別も容易ではないが,肝超音波検査あるいは肝造影CT が有用であることを知った.一般的にFontan 循環による肝合併症に関しては,その頻度,肝線維化のメカニズム,診断,予後,治療などに関してまだ不明な点が多い.そこで本稿ではFontan 術後の肝合併症に関して,術後の肝循環の特徴,発生機序,対策などについて述べる.

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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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