日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
Print ISSN : 0911-1794
ISSN-L : 0911-1794
原著
チアノーゼ性先天性心疾患における脳膿瘍の疫学
前田 潤古谷 喜幸稲井 慶小穴 慎二梶野 浩樹上砂 光裕松裏 裕行松岡 瑠美子森 克彦須田 憲治飯島 正紀池原 聡大木 寛生金丸 浩田内 宣生中島 弘道西原 栄起濱岡 建城早渕 康信堀米 仁志桃井 伸緒安田 謙二横澤 正人新垣 義夫市田 蕗子小野 安生小山 耕太郎黒江 兼司小林 俊樹城尾 邦隆白石 公中川 雅生野村 裕一総崎 直樹村上 智明安河 内聰安田 東始哲中西 敏雄山岸 敬幸
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2013 年 29 巻 5 号 p. 236-242

詳細
抄録

背景と方法:チアノーゼ性先天性心疾患(CCHD)に伴う脳膿瘍の診断,治療,転帰を疫学的に明らかにする目的で,日本小児循環器学会心血管疾患の遺伝子疫学委員会所属施設に横断的アンケート調査を行った.
結果:90例が報告され,生存75例(83%),死亡6例(7%),転帰不明9例だった.症状が記載された83例中45例(54%)で,脳膿瘍診断時に意識障害,けいれん,麻痺などの神経学的症状が認められた.90例中17例(19%)に上気道炎,胃腸炎などの先行感染があった.歯科治療後の発症が8例(9%)あり,うち7例(88%)で抗菌薬予防投与が行われていなかった.細菌培養検査が行われた42例中32例(76%)で起因菌が同定され,口腔内に常在する連鎖球菌属が最も多かった(53%).発症時のCRP値は72%で1mg/dL以下であった.神経学的後遺症は生存75例中31例(41%)に認められ,発症時に神経学的症状を呈した症例で有意に頻度が高かった(p<0.01).
考察:CCHDに伴う脳膿瘍においては,発症時の炎症反応は低値であること,歯科治療時の抗菌薬予防内服がその発症を抑制する可能性があること,発症時の神経学的症状が後遺症のリスクに相関することが示唆された.

著者関連情報
© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top