日本小児循環器学会雑誌
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原著
重複大動脈弓11例の臨床的検討
齋藤 美香福島 直哉玉目 琢也横山 晶一郎大木 寛生三浦 大澁谷 和彦松原 宗明厚美 直孝寺田 正次
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2014 年 30 巻 1 号 p. 59-63

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抄録

背景:重複大動脈弓(DAA)は血管輪の代表的疾患であり,一側大動脈弓の部分閉鎖であっても呼吸障害および嚥下障害を来すことがある.今回われわれは,自験例の画像診断および手術時期などの臨床所見について検討した.
方法:1975年7月~2012年9月までに経験したDAA11例(胎児診断2例,その他9例,年齢は3ヵ月~9歳1ヵ月,男6例,女5例)を対象に後方視的調査を行った.
結果:11例の内訳は完全型重複大動脈弓(cDAA)4例,不完全型(iDAA)7例であった.初診時,胎児診断例以外の全症例で呼吸器症状があり,嚥下障害が1例にみられた.iDAAの造影CTと3次元画像では,全例に左鎖骨下動脈の後下方への牽引とKommerell憩室を認めた.CTによる%最狭窄部径(最狭窄部外径/最大気管外径×100)は,手術を施行した10例中4例で測定でき,中央値48%,手術未施行の1例では59%であった.50%未満の3例は,全例で手術待機中に症状が増悪したが,50%以上の2例では症状が増悪せず,そのうちの1例は手術未施行で経過観察中である.手術は10例に施行し(中央値2歳3ヵ月),全例で症状が軽快したが,術後観察期間が1年以内の3例と1年超の7例中2例に軽度の呼吸器症状が残存した.
結論:造影CTと3次元画像を用いれば,iDAAであってもDAAを診断することが可能である.気管狭窄の程度が強い症例では,手術待機中に症状が増悪する傾向があり,早期の手術が望ましい.手術により全例で症状が軽快したが,軽度の呼吸症状が残存する例もあるため,長期の経過観察が必要である.

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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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