日本小児循環器学会雑誌
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原著
胎児超音波検査にて右側大動脈弓,左鎖骨下動脈起始異常, 左動脈管に伴う血管輪と診断された症例の出生後経過
塩野 展子稲村 昇鳥越 史子田中 智彦三原 聖子成田 淳河津 由紀子濱道 裕二萱谷 太
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2014 年 30 巻 3 号 p. 306-315

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抄録

目的:当院で胎児診断した右側大動脈弓(RAA),左鎖骨下動脈起始異常(ALSA),左動脈管に伴う血管輪(RAA with ALSA)の出生後の臨床経過を後方視的に検討し,RAA with ALSAの適切な胎児診断法,経過観察方法を考案する.
方法:2001年1月〜2011年12月までの11年間で胎児心エコー検査は1,695例施行し,うち11例がRAA with ALSAと診断され,いずれも出生後に血管輪と診断した.確定診断は,出生後の心エコー検査,あるいはCT検査で行い,手術例に関しては術中所見も考慮した.この11例を対象として後方視的に検討した.
結果:胎児診断RAA with ALSA 11例のうち院内出生は5例,院外出生は6例.そのうち2例が出生後に呼吸症状を呈し,手術を施行した.手術時期はそれぞれ生後1ヵ月,1歳5ヵ月で,前者は術中に重複大動脈弓(DAA)と診断した.それ以外の9例は経過観察期間1〜5年で無症状である.また1例が22q11.2 deletionで,生後心室中隔欠損症を認めたがそれ以外の症例に他の心疾患,および心外奇形の合併はなかった.
結論:胎児期のRAA with ALSAとDAAの鑑別には,three-vessel trachea viewだけではなく,大動脈弓から起始する頸部血管を同定することが重要で,DAAの細い大動脈弓には注意が必要である.胎児期にDAAが否定できない場合は,周産期管理が可能な施設での分娩が必要である.RAA with ALSAの中には,経過中に呼吸障害を呈するものがあり,定期的な外来観察と家族への説明は重要である.

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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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