日本小児循環器学会雑誌
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心臓由来幹細胞研究から想定される心臓拍動持続促進因子
川口 奈奈子松岡 瑠美子中西 敏雄
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2014 年 30 巻 5 号 p. 491-497

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抄録

 心筋梗塞後に低下した心機能回復のための治療に,胚性幹細胞,induced pluripotent stem cell(iPS細胞),体性幹細胞などを用いた幹細胞医療が注目されている.胚性幹細胞およびiPS細胞は,体性幹細胞と比較して,効率良く心筋細胞に分化するので,iPS細胞を心筋細胞に分化させ,死滅した心筋細胞に代わって機能回復を図る再生医療の確立が期待される.一方,体性幹細胞を用いる再生医療の開発も進められている.われわれは,心臓にあるc-kit陽性細胞を分離培養し,転写因子GATA4発現が高い心臓幹細胞を分離した(CSC-4A).GATA4発現が高い細胞はtroponin陽性細胞に分化しやすい傾向があり,かつ,共存培養心筋細胞の拍動持続時間を延長させる効果が観察され,再生医療に有用な性質と考えられた.われわれの研究から,心筋細胞とCSC-4Aとの共存培養液では,insulin-like growth factor (IGF)-1の濃度が上昇しており,一方,CSC-4A自体はIGF-1を発現しないことから,CSC-4Aが未知のサイトカイン(心臓拍動持続促進因子)を放出して心筋細胞のIGF-1発現を上昇させ,拍動持続を促進する可能性が示唆された.このサイトカインの正体が明らかになれば,単独,あるいはiPS細胞由来心筋細胞との併用による再生医療の開発につながることが期待される.

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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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