日本小児循環器学会雑誌
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小児期肺動脈性高血圧の正しく的確な治療戦略
佐地 勉中山 智孝高月 晋一池原 聡嶋田 博光直井 和之佐藤 真理松裏 裕行
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2015 年 31 巻 4 号 p. 157-183

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抄録

小児期PAHの薬物療法を行うにあたって,臨床医は小児は成人と異なり様々な特色があることを再認識しなければならない.すなわち,代謝酵素活性(p450など),受容体の濃度(密度)や感受性,器官の機能発達(特に腎臓と肝臓,心筋代謝),体脂肪の容積,蛋白(アルブミン)結合率,血中蛋白濃度,分散容積,薬物動態PKや薬力学PD,一定の年齢だけ反応する臓器(動脈管など),薬理遺伝子的背景, 遺伝子多型などによる個人差,特異体質,薬物相互作用,生体内活性物質(サイトカイン,ホルモン,伝達物質,カテコラミンなど)の影響である.特に小児期の重症疾患に対しては,“Right drug for the Right patient at Right time”という諺に準じて,その個人に見合った慎重なcase by caseの薬剤選択を心掛けなくてはいけない.小児期の肺高血圧治療薬には,NO-cGMP経路,PGI2-cAMP経路,エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)の三大肺血管作動薬を使用する.小児では,世界的にもほとんどがoff-labelの状態で使用されている.しかし肺血管拡張作用以外の,細胞増殖抑制作用,線維化・肥大抑制作用,抗酸化ストレス・抗炎症作用を秘め,長期にわたって血管壁に抗リモデリン作用を発揮する薬剤を選択したい.また特発性(遺伝性,家族性)と二次性肺高血圧(左心不全,膠原病関連,呼吸器関連,肺血栓塞栓関連,そして新生児期肺高血圧など)では,3大治療薬が持つPDE5阻害作用,PGI2産生促進作用,エンドセリン受容体拮抗作用などの有効性もそれぞれ異なると予想される.本稿では,治療薬の小児期でのエビデンスを紹介しながら,最適の治療法を推奨したい.

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© 2015 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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