日本小児循環器学会雑誌
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原著
乳び胸腹水を止める可能性,低侵襲小児リンパ外科:リンパ流の病態生理に基づく外科治療
加藤 基渡邊 彰二野村 耕司黄 義浩木南 寛造小川 潔星野 健司菱谷 隆河内 貞貴川嶋 寛田波 穣
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2018 年 34 巻 3 号 p. 135-142

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抄録

背景:術後及び先天性乳び胸腹水は入院期間の延長や成長障害だけでなく致死的となることがあり,新たな治療の開発は急務である.リンパ管疾患の病態理解により乳び胸腹水は中枢リンパ管系統の破綻が原因であり,体表リンパ管疾患と類似していることが明らかとなった.

方法・対象:2014年4月~2016年10月の間に当科で治療を行った生後25日から2歳の連続した12例を対象とし,後方視的検討を行った.いずれも保存加療で難治であり病態に合わせてリンパ管造影法またはリンパ管静脈吻合術を行った.

結果:4例で胸水・腹水は完全に停止した.3例は追加で治療を要したものの,部分的に治療効果が確認できた.5例は経過中に呼吸不全などをきたし死亡した.

考察:われわれは体表リンパ管疾患の治療で育んだリンパ流の評価・再建法を応用した低侵襲外科治療を行った.重症例では未だ治療効果は限られているが,リンパ流の改善という病態に立脚した新たな治療の可能性が示唆された.過渡期にあるリンパ外科的治療は今後さらなる発展が期待される.

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© 2018 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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