2019 年 35 巻 2 号 p. 99-111
小児肺高血圧(PH)が,特発性・遺伝性以外に,心疾患,呼吸疾患,肝門脈疾患や全身疾患など多彩な病態を基礎として発症することは成人と同様であるが,小児の特徴として,肺の発生・発達・成長の影響を大きく受けることは重要である.気管支肺異形成(BPD)や先天性横隔膜ヘルニア(CDH)など,周産期の適応障害や肺の発達成長障害の重要性が強調された小児PHの臨床分類も考案されている.PHの血管病変形成に関する研究は,肺動脈性肺高血圧に見られる血管病変,血管機能変化や遺伝子異常を中心に進められ,実験動物では,モノクロタリン投与ラット,慢性低酸素暴露,SU5416+慢性低酸素暴露やBMPR2などの遺伝子改変モデルが用いられている.肺発達成長障害に関しては,高濃度酸素投与,人工呼吸器による圧伸展,出生前の炎症などのBPDモデル,nitorofen投与,胎児手術でのCDH作成,横隔膜欠損をきたす遺伝子改変などのCDHモデルからも,新たな知見が得られている.