日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
室房伝導を伴う胎児期心室頻拍症から生後高度房室ブロックとなった1例
白水 優光宗内 淳杉谷 雄一郎岡田 清吾川口 直樹飯田 千晶渡邉 まみ江川上 剛史
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2019 年 35 巻 3 号 p. 188-194

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抄録

胎児期発症心室頻拍の新生児例において,生後,電気的除細動による心室頻拍停止後に一過性高度房室ブロックとなった1例を経験したので報告する.在胎39週3日の胎児心エコー図検査で心拍数180回/分の房室解離のない胎児頻拍症を指摘され当院産科へ紹介となり,そのまま娩出となった.出生体重は3,130 gであった.12誘導心電図では左軸偏位・幅広いQRS波を伴うshort RP′頻拍であり,アデノシン三リン酸急速静注により房室解離が見られたので心室頻拍症と診断した.電気的除細動により心室頻拍は停止したが,脚枝ブロックを伴う高度房室ブロック(P波138回/分,QRS波75回/分)となった.血圧32/15 mmHgであったがドパミン投与により血圧は回復した.心エコー図検査では左室拡張末期径16.8 mm,左室駆出率30%であった.生後15時間後より2度房室ブロックを経て,生後2日には正常洞調律へ復し,生後48日に退院した.経過中および退院後のホルター心電図検査でも心室頻拍・房室ブロックの再発は認めなかった.胎児期には心室頻拍による逆行性室房伝導を認めていたにもかかわらず,心室頻拍停止後にHis–Purkinje伝導系の高頻度駆動抑制(overdrive suppression)現象のため高度房室ブロックとなった希な経過であった.

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© 2019 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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