日本小児循環器学会雑誌
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術後合併症を起こさないために,また発生時いかに対処するか:乳糜胸
猪飼 秋夫
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2019 年 35 巻 4 号 p. 208-213

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抄録

乳糜胸は,先天性心疾患の外科治療の術後合併症として比較的頻度が高く,特に新生児期の手術,右心バイパス術の手術件数の増加によりその頻度は増加している.乳糜胸は,腸管にて吸収された長鎖脂肪酸がカイロミクロンとして形成され,リンパ管より漏出し胸腔内に貯留して発症する.診断は,胸水の分析により,白血球中のリンパ球80%以上,中性脂肪110 mg/dL以上が含まれることで確定する.その病因は,外科的手技によりリンパ管ないし胸管が損傷された場合,右心バイパス術や無名静脈の閉塞による静脈圧上昇により漏出する場合,さらに先天性に分けられる.治療方法としては,脂肪制限食,MCTミルク,絶食,ソマトスタチン/オクトレオチド投与などでリンパ流量を減少させる保存的治療と,胸膜癒着,胸管結紮そして胸腔腹腔シャントなどの侵襲的治療があり,定まった治療体系は未だ確立されていない.さらに近年,小児領域でもリンパ管に対する直接的な画像診断が可能となり,MRIによるリンパ管造影,カテーテルによるリンパ管塞栓,リンパ静脈吻合,等の治療法も取られるようになってきている.乳糜胸に対する治療は今後さらなる発展の可能性がある分野である.

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© 2019 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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