小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
臨床
抜歯後の止血困難がきっかけで見出した軽度血友病Aの1例
辰巳 千明折野 大輔清水 邦彦前田 隆秀
著者情報
キーワード: 血友病A, 抜歯, 止血困難
ジャーナル フリー

2012 年 50 巻 1 号 p. 58-62

詳細
抄録

血友病は,外科処置や外傷,歯の交換,抜歯に伴い長引く異常出血が見られる出血性疾患である。交換期の上顎左側乳犬歯と上顎左側第一乳臼歯の抜歯後の止血困難をきっかけに,軽度血友病A と診断された10 歳0 か月男児1 例を経験した。抜歯に先立って保護者に出血傾向の有無について問診したところ,無しの返答を受けた。抜歯後の止血が容易でなかったことから,抜歯窩をガーゼで圧迫し20 分間噛ませたところ止血した。しかしながら,帰宅後,抜歯窩から出血し,止血しないため翌日来院した。浸潤麻酔下で抜歯窩を縫合した後,CO2 レーザーとシーネを用いて止血した。抜歯後に異常出血を経験したことから再度の問診を行なった。患児は幼児期より転倒によって頻繁に背部,臀部に内出血がみられていたが,かかりつけ小児科医による定期的な血液検査によって,出血性素因が否定されていることを確認した。しかしながら,患児が軽度の出血傾向を有することを疑い,血液専門医療機関の受診を薦めた。某小児医療センター血液科において2 回の血液検査が行われ,軽度血友病A と診断された。

著者関連情報
© 2012 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top