小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
原著
小児の定期的歯科チェックアップの国際比較
田中 光郎
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 54 巻 1 号 p. 16-21

詳細
抄録

歯科チェックアップは個々の小児の状況に応じた清掃指導,食事指導,専門的な機械的歯面清掃,フッ化物塗布などの予防的指導や処置,バイトウイングX 線検査による隣接面齲蝕の早期発見などを行うオーダーメードの歯科健康診査であり,大人数を対象として一律に行う「スクリーニング」に比較して,歯科疾患を「予防」する観点からは大変優れたシステムである。しかしながら,我が国では諸外国に比べてその価値が一般に認知されていない。本研究では,定期的歯科チェックアップについて海外の国々との比較において我が国の現状を把握し,考察することを目的として,アンケート調査を行った。 その結果,我が国におけるチェックアップ受診率は44%で他の国々の半数以下で突出して低い結果であり,不受診の主な理由は「齲蝕がない」「経済的負担が大きい」「時間的余裕がない」などであった。歯科のチェックアップのために学校を休ませた経験についての質問では我が国では98%が一度もないと回答しており,これも突出して多かった。我が国では欧米と比較して,定期的な歯科チェックアップの価値が評価されておらず,社会的,経済的な背景も相俟って実際の行動に結びついていないものと思われる。小児の口腔衛生状態の更なる改善は将来の成人の口腔衛生状態改善にも資するものであり,欧米並みに受診率を上げることは我が国の口腔保健向上の観点から今後取り組むべき課題である。

著者関連情報
© 2016 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top