1976 年 14 巻 2 号 p. 233-240
本学小児歯科外来を訪ずれた遺伝性エナメル質形成不全症の患児で,永久歯が多数埋伏し,多数の歯牙に象牙粒か認められる症例について報告した.技去乳歯を光学顕微鏡,偏光顕微鏡,顕微X線写真,微小焦点X線回折装置により観察分析した結果,歯冠表面には根跡程度のエナメル質か存在し,無柱エナメル質様構造あるいは配列の乱れたエナメル小柱が認められ,X線回折像より結晶の配向性はほとんど認められなかった.加えて,象牙粒のほか歯髄中には広範囲に石灰化物が認められたが,これらはすべてアパタイトから成っていることが判明した.
この症例に対して,小児歯科の立場から矯正的,補綴的に治療を行ない,現在経過観察中であるが,思春期の小児にとって審美性・機能性の回復が重要であることが示された.