若年者の永久前歯部欠損の審美的回復に当って,接着ブリッジは適した方法である.舌面板に保持孔を有さないタイプの接着ブリッジにおいて,舌面板とレジンとの接着性を向上させるための金属面の処理が重要となってくる.そこで,金属の接着性を高めるための処理方法として,金属の各種酸によるエッチング処理,サンドブラスト処理を行ない,処理面の走査型電子顕微鏡による観察を行なった.
使用金属は,ニッケルクローム系陶材焼付用合金サイクロンGである.その結果,25ミクロン酸化アルミナ粒子によるサンドブラスト面には,微細な凹凸を認めることができたが,アンダーカットは少なかった.60%硝酸,36%塩酸,60%硫酸による処理面は,特別な変化は認められなかった.王水による処理面には,複雑な凹凸及びアンダーカットが多数認められた.この様な凹凸及びアンダーカットは,合金成分のうち,王水によって溶解され易い部分から選択的に溶解されるために生ずるものと思われた.凹凸及びアンダーカットは,王水による処理の時間によっても異なつた様相を示していた.このような凹凸及びアンダーカットは,金属面の面積を増加させ,その機械的結合によって,接着力を向上させる上で有効であると考えられた.