我々は,小児の根尖性歯周炎が,後継永久歯胚に及ぼす種々の影響を明らかにするために,片側の下顎乳臼歯に病的X線透過像を認め,反対側同名歯は健全またはC2の小児74症例(3歳~9歳)を選択し,第一報で報告した.その後1~9年間の追跡調査のできた28症例について,永久歯の形成段階,萌出時期,形成障害等について観察し,以下の結果を得た.
1)患側の先行乳歯を抜歯した場合以下の所見がみられた.
(i)乳歯根尖性歯周炎による後継永久歯胚の回避現象は,その後の永久歯の萌出には,あまり影響を与えないと思われた.
(ii)後継永久歯の萌出余地が充分であれば,抜歯側の永久歯は,対照である健側の永久歯より早く萌出する傾向を認めた.
(iii)19歯中12歯は,先行乳歯を抜歯した後も抜歯側の永久歯の形成段階の速度は,健側の速度と同じであった.2)健側,患側の両側の永久歯が萌出するまで観察できた6症例中,乳歯根尖性歯周炎によると考えられる後継永久歯エナメル質の形成障害は,3歯に認められた.