小児歯科学雑誌
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電気抵抗値による乳歯の歯髄診断とその3年予後に関する臨床的研究
立川 義博井手 有三田北 恵子浜野 良彦中田 稔
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1984 年 22 巻 3 号 p. 661-666

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抄録

電気抵抗値を応用した歯髄診断法と処置の選択法にもとづいて,臨床応用を行なった乳歯の3年予後について検討した.資料は,九州大学歯学部附属病院小児歯科外来を受診した2歳から10歳までの小児31名,74歯で,肉眼的に象牙質齲蝕が認められ,露髄の可能性もあると判断された乳歯とした.X線写真撮影後,局所麻酔下でラバーダム防湿を行ない,カリエスメーターを用いて,軟化象牙質除去後の電気抵抗値を測定した.
全症例74歯中,良好70例(95%),不良4例(5%)であった.不良となった4例は,電気抵抗値20.0~18.1KΩ 以下でFC断髄を行なった3例であった.すなわち,電気抵抗値18.1KΩ 以上の健全歯質が介在していると判断された27例のうち,26例が良好な経過をとっており,カリエスメーターを利用することにより,露髄の見落しを可及的に避けることができたと考えられた.また,FC断髄を行なった42症例のうち,電気抵抗値が14.0KΩ 以下のものでは27例中3例の不良例が観察されたのに対し,電気抵抗値18.0~14.1KΩ の15症例がすべて良好であったことを考えると,電気抵抗値が14.1KΩ 以上の症例では,歯髄病変の範囲が根部歯髄にまで及んでいる可能性が低いものと推測できた.
したがって,電気抵抗値の測定は,臨床上客観性のある診断を行なう上で,有効な補助的手段であると思われた.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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