フラボノール類には,増大した毛細血管の透過性と脆弱さを低下させる作用があり,アスコルビン酸はこの作用に対して協同的に働くと報告されている。このような毛細血管の障害は歯髄,歯根膜組織や歯槽骨などにも見られる。そこで今回,このフラボノール類の作用機構を明らかにする目的で,ヘマトポルフィリン存在下でのヒト赤血球光増感溶血に対するフラボノール化合物の一つであるクエルセチンの保護効果と,その保護効果に対するアスコルビン酸の作用について検討した。
クエルセチンは,ヘマトポルフィリン存在下での光増感溶血に対して保護効果を示した。この保護効果は,クエルセチンによる一重項酸素分子の失活と脂質過酸化反応に伴うラジカル連鎖反応の停止によるものであった。クエルセチンが光増感溶血を抑制しているとき,それ自身は酸化された。この酸化はアスコルビン酸で抑制されたが,アスコルビン酸は光増感溶血に対して保護効果を示さなかった。このことはアスコルビン酸が,この光増感溶血を保護する過程で生成した酸化型クエルセチンを還元し得ることを示唆している。